最後の犬
実家で最初に飼われた犬は、白くて毛の多い中型の雑種で、シロといった。初めての犬は特別で大好きな存在だった。でも小学1年のあの日、家族で大きな街に1日出かけて帰ってきたら死んでいた。
自分には夢で見たような…何か虫の知らせがあってシロがいなくなるんじゃないかと心配していた。だからあの日、家族で出掛ける時にシロをひとり留守番させるのが気掛かりでしょうがなかった。出掛ける直前までシロはひとりで大丈夫か、ご飯は誰があげるのかとしつこく念をおして親に言ったのを覚えている。
そうして街へ出掛けて夜、家に帰ったら、やっぱりシロは死んでいた。
あれだけ言ったのにと、悔やんでも悔やみきれず泣きに泣いて何で死んだのか、ご飯をあげなかったからではないかと親に問い詰めたが死んだ理由は分からなかった。
誰もいない犬小屋は寂しくてしょうがなかった。
それから暫くして、うちでは雑種は2度と飼わなくて、代わりに細身の猟犬を飼うようになった。
父が鉄砲を趣味にしていたから猟犬を飼うことになったのだ。しかも黒くて毛の短い犬(ポインター)だったから、子供心に親を恨んだ。シロが死んだ責任は親にあると思っていたんで、そんな気持ちを全く無視して真逆の犬を飼うなんて!シロへの執着から、他の犬は絶対に嫌だあれは父の犬だと思った。